美容師免許を取得してからディレクター・店長もしくは独立開業を目指すためには、10年や20年スパンの努力が不可欠です。新人美容師の中には自分自身の将来の姿が気になり、不安を感じている人もいるでしょう。
当記事では、時代が変化しても勝ち残ることを目指す人のため、美容師業界の現状と将来性を解説します。美容師としてのキャリアパスを今一度真剣に考えて、未来を見据えた行動を起こしたい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 美容師業界の現状
1-1. サロン同士の競争激化・価格の二極化
1-2. フリーランス美容師の増加
1-3. トータルビューティー技術の需要の増加
2. 美容師業界の将来性
2-1. AI技術が発展しても仕事はなくならない
2-2. 福祉業界における美容師需要が増加する
2-3. 海外における日本の美容師需要も増加傾向にある
3. 【美容師】今後のおすすめのキャリアパス・働き方
3-1. ディレクター・店長
3-2. 独立開業
3-3. 福祉美容師
まとめ
1. 美容師業界の現状
美容師として後悔しないキャリアを歩むためには職業の将来性のみではなく業界全体の現状に目を向けて、自分自身の立ち位置を振り返る必要があります。
そこでまずは、美容師業界が抱える3つのトレンドを詳しく紹介します。トレンドを参考に、キャリアパスを検討するうえでのヒントを得てください。
1-1. サロン同士の競争激化・価格の二極化
厚生労働省の統計によると、2020年度末時点において全国には25万件以上のサロンがあり、競争が激化している状態です。
(出典:厚生労働省「令和2年度衛生行政報告例の概況」
次々に新しいサロンがオープンする中で一部のお店は他店との差別化を図るため、低価格を売りにしたサービスを開始しました。その一方で「高い金額を支払っても、質の高いサービスを受けたい」と考える女性をターゲットに定めて高級路線を貫くお店も見られることから、価格の二極化が進んでいます。
1-2. フリーランス美容師の増加
働き方に関して言うと、特定の会社に属さない「フリーランス美容師」として働く人が増加しています。フリーランス美容師は固定給がなく、収入が安定しにくいデメリットがある反面、勤務時間や曜日の自由度が高い働き方です。
また、フリーランス美容師は原則としてカウンセリングからスタイリングまでを自分自身でこなすことから、お客さんと十分に向き合い、満足度の高いサービスを提供できます。
フリーランス美容師が増加した理由の1つは、SNSの普及です。SNSにスタイル写真を公開する・お客さんと交流するなどの方法でファンを作り、集客する手法が一般化したことが追い風となり、個人事業主として働く美容師が増加しました。お客さんの需要が多様化し、「どこで」ではなく「誰の」施術を受けるかを重視する人が増加している風潮も、フリーランス美容師にとっての追い風です。
1-3. トータルビューティー技術の需要の増加
国民全体の生活水準が向上するに連れて美と健康に高い関心を持つ人が増加し、同じ施設にいながら、ヘアケア・ネイル・エステメニューなどを受けられるサロンが登場しました。
近年では、骨格タイプ診断やパーソナルカラー診断に注目するお客さんも多く、最新理論をもとにヘアスタイルやヘアカラーを提案できる美容師はより重宝される傾向にあります。また、40代や50代のお客さんに対してエイジングケアを提案でき、年齢に応じた美の追求をサポートできる美容師も、重宝される人材です。
時代が変化しても生き残れる美容師へのステップアップを図るためには、カットやカラーのみではなく、総合的な観点からお客さんの美と健康づくりを助けるスキルを養いましょう。トータルビューティー技術を身に付けた人材に対する需要は高く、さまざまな場所での活躍が見込まれます。
2. 美容師業界の将来性
美容師の将来性に関するネガティブな意見を聞き、未来に対して漠然とした不安を感じる人もいるでしょう。しかし、IT技術の進歩や社会構造の変化が進行しても美容師の仕事がなくなる可能性は低いため、過剰な不安を感じる必要はありません。
ここからは、「美容師は将来性のある仕事」と言える理由を解説します。
2-1. AI技術が発展しても仕事はなくならない
AI技術の発展によって人間の役割をロボットが代行するようになると、スーパー店員・ホテルのフロントなどの仕事は失われる可能性があるとも言われます。AI技術の発展によって失われる可能性がある仕事の特徴は、次の3点です。
・コミュニケーション力や創造性が要求されない仕事
美容師は季節や健康状態などに応じて異なる髪の状態を適切にとらえて、創造性を発揮し、お客さんの要望に沿った施術を行うことが要求される仕事です。また、美容師がお客さんの要望を聞き出すには高度なコミュニケーション力も必要であることから上記の特徴に合致せず、今後も残る可能性が高い仕事と言えます。
2-2. 福祉業界における美容師需要が増加する
少子高齢化が今後さらに進行すると、高齢者の自宅・医療機関・高齢者施設などを訪問して施術を行う「福祉美容師」に対する需要が現在以上に高まるでしょう。
福祉美容師は、加齢や病気の影響などを理由としてサロンに通うことが難しい高齢者を対象に、ヘアカット・ヘアメイク・着付けなどのサービスを提供します。
福祉美容師として活躍するために必須の資格はないものの、美容師免許に加えて下記のような資格を取得し、介護に関する基礎知識を身につけることが一般的です。
・訪問福祉美容師
・福祉理美容師
高齢者が身だしなみを整えることは、QOL(生活の質)を向上させるための良い手段です。「サロンにおける経験を生かし、高齢者に貢献したい」と思える美容師は、今後も生き残れる可能性が高いと言えます。
2-3. 海外における日本の美容師需要も増加傾向にある
日本人美容師の技術力は非常に高く、「世界に通用する水準である」とも評価されます。実際、世界の美容師が参加するヘアデザインコンテストで日本人美容師が受賞した記録は多く、海外へと活躍の場を広げることも可能です。
海外の中でも日本人が多く住む地域では特に、日本人美容師に対する高い需要が見込まれます。海外に住む日本人から口コミが広がれば現地の人の来店も増加し、よりサロンを盛り上げることが可能です。
ただし、海外で活躍する美容師を目指すためには、十分な語学力や現地の免許が要求されるケースもあります。「グローバルな美容師を目指したい」と考える気持ちを大切にして、夢を実現するためのスキルアップに励める人は、海外で活躍できる素質があると言えるでしょう。
3. 【美容師】今後のおすすめのキャリアパス・働き方
サロン同士の競争が激化している美容師業界の現状を踏まえると、ただ闇雲に努力しても、時代の変化に対応できないリスクがあります。
美容師業界の現状や将来性を踏まえたうえでおすすめのキャリアパス・働き方を確認し、努力の方向性を見定めて、明るい未来につなげましょう。
3-1. ディレクター・店長
AI技術が発展しても生き残る美容師になるためには、確かな技術力やコミュニケーションスキルが必要です。必要スキルを確実に習得するためには目先の目標として、ディレクター・店長へのステップアップを目指す方法が考えられます。
ディレクター・店長にステップアップする過程では、1つの職場に長く勤務して多くのお客さんを獲得し、美容室の信頼を得る努力が不可欠です。合わせて職場の人と良好な人間関係を構築するスキル・集客のテクニックなども磨き、サロンを牽引できる人材への成長を目指しましょう。
3-2. 独立開業
トータルビューティー技術など時代の需要に沿ったスキルを習得した後は、独立開業するキャリアパスが一案です。
独立開業すれば自分自身の思い描く理想に沿い、お客さんに支持されるサロン作りに取り組めます。また、海外で経験を積んだ美容師の場合は独立開業する際のフィールドとして、日本以外の国を選択する方法も一案です。
3-3. 福祉美容師
少子高齢化時代に対応したキャリアパスを考えるなら、福祉美容師を目指す方法が一案です。
美容師から福祉美容師への転身を図るためには、高齢者に対して安全に施術を提供できるスキルが要求されます。福祉美容師の求人を探すとともに必要なスキルを習得するための研修や講習会に参加し、前向きに努力することが、理想のキャリアを築くコツです。
まとめ
美容師業界では現状、サロン同士の競争激化やお客さんの需要の変化が起こっており、従来通りのやり方で成功することが難しい時代と言えます。特定の会社に属さず、フリーランス美容師として活動する人が増加していることも、近年の美容師業界に見られる特徴の1つです。
ただし、美容師業界の将来性自体は明るく、時代の変化に対応したスキルを習得した美容師は今後より一層の活躍が見込まれます。現状や将来性を正しく把握したうえで自分自身のキャリアパスと真剣に向き合い、前向きな努力を続けましょう。